ネットワークの勉強をしていると、必ずと言っていいほど登場する「MTU」と「MSS」という用語。 参考書や技術ブログを読んでいると何となく重要そうなのは分かるものの、「結局この2つって何が違うの?」「どっちを気にすればいいの?」と疑問に思ったことがある人も多いはずです。
特にインフラやサーバー周りを触り始めたばかりの頃は、TCP/IP、パケット、フレームといった言葉が一気に押し寄せてきて、頭が追いつかなくなりがちです。MTUやMSSもその流れで出てきて、「まあ今は深く分からなくてもいいか」と放置されやすいポイントでもあります。
しかし実務では、通信が遅い、接続できない、VPN越しだと不安定、といったトラブルの原因が、MTUやMSSの設定にあることが少なくありません。 「名前は知っているけど説明できない」状態のままだと、原因調査のときに詰まりがちになってしまいます。
概要説明:MTUとMSSを一言でいうと

まずは全体像をつかむために、それぞれをかなりシンプルに表現してみます。
- MTU → ネットワーク上で一度に送れるデータの最大サイズ(荷物そのものの大きさ)
- MSS → TCP通信で実際に運べるデータ部分の最大サイズ(箱の中身の大きさ)
この時点ではまだピンとこないかもしれませんが、「MTUは全体」「MSSは中身」という関係性を覚えておくだけでも、後の理解がかなり楽になります。
MTUとは何かをやさしく理解する
MTUの基本的な意味
MTUは「Maximum Transmission Unit」の略で、日本語にすると「最大伝送単位」です。 少し堅い言葉ですが、意味としては「ネットワークで一回に送れるデータの最大サイズ」と考えて問題ありません。
インターネットや社内ネットワークでは、データはそのまま一気に送られるわけではなく、小さな単位に分割されて送られます。この分割された一つ一つを「パケット」と呼びます。
MTUは、このパケット1個あたりの最大サイズを決めるルールです。
身近な例えで考えるMTU
MTUを理解するには、宅配便の例えが分かりやすいです。
- トラックに積める荷物の最大サイズ → MTU
- 荷物が大きすぎると、分割して別々に送る必要がある
ネットワークも同じで、MTUを超えるサイズのデータは、そのままでは送れません。そのため、データは自動的に分割され、複数のパケットとして送信されます。
一般的なMTUサイズ
よく使われるEthernetでは、MTUは1500バイトが標準です。 この数値は多くの環境で「暗黙の前提」になっているため、トラブル時に意識しないと原因に気づきにくいポイントでもあります。
VPNやトンネリング、特殊な回線を使うと、この1500バイトが使えなくなり、MTUを小さく調整する必要が出てきます。
MSSとは何かをやさしく理解する
MSSの基本的な意味
MSSは「Maximum Segment Size」の略です。 こちらはTCPという通信方式に限定した概念になります。
一言で言うと、TCPで送れるデータ部分の最大サイズです。
ポイントは「データ部分」というところです。 TCPの通信では、実際のデータ以外にも、制御情報(ヘッダ)が必ず付加されます。
MTUとMSSの関係
ここでMTUとの関係が出てきます。
- MTU:パケット全体の最大サイズ
- MSS:その中に入れられるデータ部分の最大サイズ
つまり、 MSS = MTU – ヘッダサイズ という関係になります。
一般的な環境では、
- MTU:1500バイト
- IPヘッダ:20バイト
- TCPヘッダ:20バイト
となるため、 MSSは1460バイトになることが多いです。
この数値を見たことがある人もいるかもしれません。
身近な例えで考えるMSS
再び宅配便の例えを使います。
- ダンボール箱全体の大きさ → MTU
- 箱の中に入れられる中身 → MSS
- 緩衝材や伝票 → ヘッダ
箱そのものが大きくても、緩衝材や伝票が増えれば、中に入れられる中身は減ります。 MSSは、まさにこの「実際に運べる中身の量」を示しています。
MTUとMSSの違いを整理する
ここまでの内容を踏まえて、違いを整理してみます。
対象範囲の違い
- MTU:IPレベルの話(ネットワーク全体の制限)
- MSS:TCPレベルの話(通信プロトコル固有の制限)
MTUは「道幅」、MSSは「車に積める荷物」と考えると分かりやすいです。
調整されるタイミングの違い
MTUはネットワークインターフェースや経路によって決まります。 一方、MSSはTCPの接続確立時に、お互いの端末が「これくらいなら送れるよ」と相談して決まります。
そのため、MSSは自動調整されることが多く、普段は意識する機会が少ないです。
なぜMTUやMSSが問題になるのか

通信が途中で止まる理由
MTUやMSSが原因で起きるトラブルの代表例が、「一部の通信だけが遅い・失敗する」という現象です。
例えば、
- 小さいデータは問題なく送れる
- 大きなファイルの送信だけ失敗する
- 特定のWebサイトだけ表示が遅い
こうした症状は、パケットの分割や再送がうまくいっていない可能性があります。
フラグメンテーションの問題
MTUを超えたデータは分割されますが、この分割(フラグメンテーション)が頻発すると、通信効率が大きく下がります。
さらに、経路上の機器が「分割されたパケットを許可しない」設定になっていると、通信そのものが失敗することもあります。
実務でのポイント:どこを意識すればいいか
インフラ・サーバー運用での注意点
- VPNやクラウド環境ではMTUが小さくなりやすい
- OSやネットワーク機器ごとにMTUの設定場所が違う
- MTU変更時はMSSへの影響も考える
特にVPN環境では、トンネル用のヘッダが追加されるため、実質的に使えるMTUが小さくなります。
トラブルシューティング時の考え方
通信トラブルが起きたとき、いきなり設定を変えるのではなく、
- どの経路で通信しているか
- 途中にVPNやNATがあるか
- 大きなデータだけ失敗していないか
といった点を順に確認すると、MTUやMSSが原因かどうか切り分けやすくなります。
一問一答で整理するMTUとMSS
- MTUとMSSはどちらを設定すればいい?
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基本はMTUを正しく設定すれば、MSSは自動調整されることが多いです。
- MSSだけ小さくするのは意味がある?
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経路上でMTUが変更できない場合、MSSを調整することで回避できるケースがあります。
- 普段のWeb閲覧で意識する必要はある?
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通常は不要ですが、VPNや特殊なネットワークを使う場合は知識として重要です。
まとめ
MTUとMSSは、名前だけ見ると難しそうですが、関係性を理解すると意外とシンプルです。
- MTUは「一度に送れる最大サイズ」
- MSSは「その中で実際に使えるデータサイズ」
- MTUが基準になり、MSSが決まる
この違いが分かっているだけで、ネットワークトラブルに遭遇したときの視野が大きく広がります。 原因が分からず闇雲に設定を変えるのではなく、「もしかしてMTUやMSSかもしれない」と考えられるだけでも、実務では大きな武器になります。
ネットワークは見えない部分が多い分、こうした基礎知識の積み重ねが、確実に後から効いてきます。 MTUとMSSの違いを理解し、安心してネットワークと向き合えるようになっていきましょう。

