DNSはITの世界では避けて通れない基礎知識ですが、「何となく分かったつもり」のまま使われがちな分野でもあります。
特に実務に入ると、DNSが原因のトラブルは少なくありません。にもかかわらず、仕組みを一から説明できる人は意外と少ないのが実情です。
DNSルックアップの流れを理解するうえで重要なのは、「細かい仕様を暗記すること」ではなく、実際にどんな順番で、どこを確認しながら名前解決が進んでいるのかを把握することです。
この記事では、DNSルックアップの基本的な流れを押さえつつ、
- hostsファイルの存在
- ブラウザ独自のDNS解決(DoH)
- 再帰問い合わせの考え方
- キャッシュが存在する複数のレイヤー
といった、現場で混乱しやすいポイントも丁寧に補足しながら解説します。
「DNSってそういう順番で動いていたのか」と腑に落ちることを目標に、進めていきます。
DNSとは何かを整理し直す

DNSは名前をIPアドレスに変換する仕組み
DNSは、ドメイン名をIPアドレスに変換する仕組みです。
インターネット上の通信は、最終的にはIPアドレス同士で行われます。
しかし、人間にとって「203.0.xx.xx」のような数字の羅列は覚えにくいため、代わりに分かりやすい名前(ドメイン名)を使っています。
DNSは、この「人に優しい名前」と「機械が理解できる住所」をつなぐ翻訳機のような存在です。
DNSルックアップとは何を指すのか
DNSルックアップとは、ドメイン名からIPアドレスを調べる一連の処理全体を指します。
重要なのは、DNSサーバーに1回問い合わせることだけを指しているわけではない、という点です。
実際には、複数の確認ステップとキャッシュの仕組みが組み合わさって動いています。
DNSルックアップの全体像を先に押さえる
まずは細部を気にせず、全体の流れを見てみましょう。
- ブラウザがURLを解析する
- hostsファイルを確認する
- ブラウザやOSのDNSキャッシュを確認する
- DNSリゾルバに問い合わせる
- DNSリゾルバが再帰的に名前解決を行う
- IPアドレスが返ってくる
- ブラウザがそのIPアドレスに通信する
この「段階的に確認していく流れ」を理解することが、DNS理解の土台になります。
hostsファイルという最初の関門
DNSよりも先に確認されるhostsファイル
OSが名前解決を行う際、実はDNS問い合わせの前に必ず確認されるものがあります。
それがhostsファイルです。
hostsファイルは、
- ドメイン名
- IPアドレス
を手動で対応付けるためのローカル設定ファイルです。
ここに記載されている内容は、DNSサーバーよりも優先されます。
なぜhostsファイルが存在するのか
hostsファイルは、もともとDNSが普及する前から存在していた仕組みです。
現在でも以下のような用途で使われます。
- 開発環境で特定のドメインをローカルに向けたい
- 一時的に通信先を切り替えたい
- DNSに依存せず名前解決を制御したい
実務で「なぜこのドメインだけ挙動がおかしいのか」と調べていくと、hostsファイルが原因だった、というケースは珍しくありません。
ブラウザは必ずOSに任せるわけではない
従来の一般的な流れ
従来の説明では、
- ブラウザはOSに名前解決を依頼する
- OSがDNSリゾルバに問い合わせる
という流れが一般的でした。
この理解自体は今でも基本として正しいです。
ブラウザ独自のDNS解決という例外
ただし、近年のブラウザでは例外も存在します。
代表的なのが、DNS over HTTPS(DoH)です。
DoHが有効な場合、ブラウザはOSのDNS設定を使わず、ブラウザ内蔵のDNSリゾルバを使って直接名前解決を行うことがあります。
これにより、
- 通信の暗号化
- プライバシー向上
- ISP依存の回避
といったメリットが得られます。
一方で、「OS側の設定を変えたのにブラウザの挙動が変わらない」といった混乱の原因にもなります。
DNSを調査する際は、ブラウザがどの名前解決方式を使っているかを意識することが大切です。
キャッシュは一か所だけではない
DNSキャッシュが存在する複数のレイヤー
DNSキャッシュは、実は一か所だけではありません。
代表的なものを挙げると、
- ブラウザのDNSキャッシュ
- OSのDNSキャッシュ
- DNSリゾルバ(ISPやパブリックDNS)のキャッシュ
があります。
どこか一つに情報が残っていれば、DNS問い合わせの一部、もしくは全部が省略されます。
キャッシュがある理由
DNS問い合わせはネットワーク通信を伴うため、回数が増えるほど遅延や負荷が大きくなります。
キャッシュを使うことで、
- 表示速度を上げる
- DNSサーバーへの負荷を下げる
という効果があります。
DNSは「毎回すべてを調べ直す仕組み」ではなく、「できるだけ再利用する仕組み」だと考えると理解しやすくなります。
DNSリゾルバの役割を正しく理解する
DNSリゾルバは調査を代行する存在
DNSリゾルバは、クライアントの代わりに名前解決を行う存在です。
クライアント(OSやブラウザ)は、
- 「このドメインのIPアドレスを知りたい」
という要求だけを出し、実際の調査作業はDNSリゾルバが引き受けます。
再帰問い合わせという考え方
ここで重要なのが再帰問い合わせです。
クライアントからDNSリゾルバへの問い合わせは、基本的に再帰的です。
つまり、
- クライアントは「最終結果だけ欲しい」
- 途中のやり取りは気にしない
という形になります。
DNSリゾルバは内部で、
- ルートDNS
- TLD DNS
- 権威DNS
へと問い合わせを行い、最終的なIPアドレスを取得します。
クライアント側から見ると、一回の問い合わせで答えが返ってきているように見えるのがポイントです。
ルートDNSから始まる階層構造
ルートDNSは道案内役
ルートDNSサーバーは、DNSの階層構造の最上位に位置します。
ただし、ルートDNSはIPアドレスを直接返しません。
代わりに、「次に聞くべきDNSサーバー」を教えてくれます。
分散管理のメリット
DNSが階層構造になっている理由は、
- 管理対象が膨大
- 一か所に集約すると壊れやすい
といった問題を避けるためです。
役割を分担することで、インターネット全体の安定性が保たれています。
TLD DNSと権威DNSの役割分担

TLD DNSで管理範囲を絞る
TLD DNSは、特定のトップレベルドメイン配下を担当します。
ここでは、
- このドメインを管理している権威DNSはどこか
という情報が返されます。
権威DNSが最終回答を出す
権威DNSサーバーは、そのドメインに関する正式な情報を持っています。
ここで初めて、
- ドメイン名
- IPアドレス
の対応関係が確定します。
DNSルックアップにおける「答え」は、常に権威DNSから返されるものだと覚えておくと整理しやすくなります。
TTLとキャッシュの関係
TTLはキャッシュの寿命
DNSレコードにはTTLが設定されています。
これは「この情報をどれくらいキャッシュしてよいか」を示す値です。
TTLが短いと変更が反映されやすくなり、長いと安定します。
実務で意識すべきポイント
DNS設定を変更した際、
- すぐ反映されない
- 環境によって結果が違う
といった現象が起こるのは、各レイヤーのキャッシュとTTLが影響しているためです。
DNSは「変更したら即反映されるものではない」という前提を持っておくと、無駄な調査を減らせます。
実務でDNS理解が役立つ場面
トラブルシューティングが楽になる
DNSの流れを理解していると、
- hostsファイル
- ブラウザ設定
- OSキャッシュ
- DNSリゾルバ
と、確認すべきポイントを段階的に切り分けられます。
闇雲に設定をいじるのではなく、順序立てて原因を探せるようになります。
インフラとアプリの橋渡しになる
DNSはインフラ寄りの話題に見えますが、アプリケーション開発とも密接に関わっています。
API連携や外部サービス接続で問題が起きたとき、DNSを理解していると対応力が大きく変わります。
一問一答で整理するDNSルックアップ
- hostsファイルはいつ参照される?
-
DNS問い合わせよりも前に参照されます。
- ブラウザは必ずOSのDNSを使う?
-
いいえ。DoHなどで独自に名前解決する場合があります。
- クライアントはルートDNSまで問い合わせている?
-
いいえ。DNSリゾルバが再帰的に代行します。
- キャッシュはどこにある?
-
ブラウザ、OS、DNSリゾルバなど複数の場所に存在します。
まとめ:DNSは「正確な流れ」を知ると怖くなくなるはず
DNSルックアップは、一見すると複雑に見えますが、
実際は「順番に確認して、分からなければ次に聞く」という素直な仕組みです。
hostsファイル、キャッシュ、DNSリゾルバ、階層構造。
これらを一つの流れとして理解できれば、DNSは決して難しい存在ではありません。
DNSの理解は、トラブル対応力を確実に底上げしてくれます。
一度しっかり整理しておくことで、現場での安心感が大きく変わるはずです。

