サーバーやストレージの世界を調べていると、よく目にするのが「iSCSI(アイスカジー)」という言葉です。
ITインフラに関わる人にとっては基本用語ですが、いざ説明しようとすると意外と難しい概念でもあります。
この記事では、初心者の方でも理解できるように、
- iSCSIとは何か
- どんな場面で使われるのか
- 基本的な仕組み
- メリット・デメリット
- 代表的な構成例 といった内容をなるべくかみ砕いて解説していきます。
iSCSIとは?

iSCSI(Internet Small Computer System Interface) とは、
SCSI(スカジー)というコンピュータのストレージ接続規格を「ネットワーク経由で使えるようにした仕組み」のことです。
通常、PCやサーバーにストレージ(HDDやSSD)を接続する際は、ケーブルを直接接続します。
しかし iSCSI を使うと、LAN(ローカルネットワーク)インターネットを含むIPネットワーク を通じて、遠くにあるストレージをまるで「直接接続しているかのように」扱えるようになります。
つまり iSCSI は、
“SCSIのコマンドをネットワークで運べるようにした技術”
と覚えておけばOKです。
iSCSIがよく使われる場面
iSCSIは企業のITインフラやクラウド環境など、さまざまな場所で利用されています。
たとえば以下のようなシーンです。
- ストレージをサーバー台数ぶん用意したくない
- サーバーのディスク容量を柔軟に増やしたい
- データセンター内のストレージを一元管理したい
- 仮想化環境(例:VMware、Hyper-V)で共有ストレージを使いたい
特に仮想化と相性が良く、複数サーバーから同じストレージにアクセスする際に便利です。
iSCSIの基本構成(ターゲットとイニシエータ)
iSCSI の理解で重要なキーワードが “ターゲット(Target)” と “イニシエータ(Initiator)” です。
● イニシエータ(Initiator)
= ストレージにアクセスする側
一般的には「サーバー」が該当します。
Windows、LinuxどちらにもiSCSIイニシエータ機能が標準で備わっています。
● ターゲット(Target)
= ストレージを提供する側
専用NAS、SANストレージ、ソフトウェアストレージなどがこれに当たります。
ターゲット側には「LUN(仮想ディスクのようなもの)」を作成し、
イニシエータ側はそれをネットワーク越しにマウントして利用します。
iSCSIの仕組みをわかりやすく解説
iSCSI は SCSI コマンドを TCP/IP 上で送受信 するための技術です。
通常のストレージ接続
PC → SATAケーブル → HDD
iSCSIを利用する場合
PC(イニシエータ) → LAN(IPネットワーク) → ストレージ(ターゲット)
ネットワークという“遠隔地に伸びたケーブル”を使っているイメージです。
流れとしては以下のようになります。
- サーバー(イニシエータ)がターゲットのIPアドレスに接続
- ターゲット上のLUNがサーバーに見える
- OS上では「ローカルディスク」として認識される
- サーバーは通常のディスクと同じようにフォーマット・書き込みが可能
このように、ネットワーク経由なのにローカル接続のように扱える点が大きな特徴です。
iSCSIのメリット

iSCSIが多くの現場で使われる理由は、その利便性にあります。
1. IPネットワークをそのまま利用できる
専用の高額なファイバーチャネル(FC)設備が不要で、
既存のLAN環境をそのまま活用できます。
2. スケールしやすい
ストレージの増減が容易で、サーバー側に依存しません。
容量追加や利用サーバーの増減に柔軟に対応できます。
3. コストが低い
専用ストレージプロトコル(FC-SAN)よりも圧倒的に安価。
中小企業や個人でも導入しやすいのが魅力です。
4. 仮想化との相性が良い
ESXi や Hyper-V など、仮想化基盤で共有ディスクを扱えるため、
HA構成(冗長化)やライブマイグレーションの利用が容易になります。
iSCSIのデメリット

もちろん、便利なだけでなく注意点もあります。
1. ネットワーク品質に大きく依存する
iSCSIはIPネットワークを使うため、
ネットワーク帯域が不足すると遅延が発生します。
2. 遅延(レイテンシ)はFCより大きい
ファイバーチャネルはストレージ専用の仕組みで高速ですが、
iSCSIは一般的なネットワークで動くため速度は劣ります。
3. トラブル時の原因切り分けが複雑
ネットワーク要因かストレージ要因か分かりにくく、
管理負荷が増えることがあります。
iSCSIが利用される代表的な構成・用途
ここでは、実際の環境で多く見られる iSCSI の使い方を紹介します。
1. 仮想化基盤での共有ストレージとして利用
VMware ESXi などで仮想サーバーを運用する際、
複数のホストから同じストレージ領域を使いたいことがあります。
iSCSI を使うと、LAN上のストレージを共有ディスクとして扱え、
- VMのライブマイグレーション
- HA(ホスト障害時の自動復旧)
- 複数サーバーでの可用性向上
といった構成を実現できます。
2. 中小企業のファイルサーバー環境
NASを使う企業が多いですが、
「サーバー側でNTFS管理したい」「バックアップ統合したい」
という場合にiSCSIが選ばれます。
サーバーから見ると「ローカルディスク扱い」のため、
細かい権限管理やバックアップ運用がしやすくなります。
3. バックアップ先のストレージとして利用
バックアップソフトは大容量ディスクを必要とするため、
iSCSIで外部ストレージを割り当てるケースが多いです。
LAN経由で自由に拡張できるため、容量不足に強く、
バックアップポリシーを柔軟に設計できます。
4. ラボ環境・検証用ストレージ
自宅ラボや社内検証環境でも、
iSCSIを使うことで安価にストレージを用意できます。
たとえば FreeNAS や TrueNAS を使えば、
古いPCでもiSCSIターゲットとして活躍します。
iSCSIの接続イメージ(概念図)
文章だけではイメージしづらいので、
簡単な概念図にしてみます。
[Server(イニシエータ)]
│
│ リクエスト(SCSIコマンド)
▼
──── TCP/IP(LAN) ────
▲
│
│ ストレージブロックを返す
[Storage(ターゲット)]
このように、一般的なLANケーブルとネットワーク機器だけで
“ブロックストレージ”を提供できるのが特徴です。
iSCSIを使う際の注意点
iSCSIを活用する場合、次のポイントを押さえておくと効率的です。
● ネットワークを専用化するのが理想
ストレージが遅いとシステム全体が遅くなるため、
iSCSI専用のVLANを作ることが推奨されます。
● 帯域確保が大切
最低でも1Gbps、できれば10Gbps以上のネットワークが望ましいです。
● MTUサイズの調整(ジャンボフレーム)
ネットワーク環境が対応していれば MTU を上げることで
より効率的にデータ転送できます。
一問一答でおさらい

- iSCSIとは?
-
SCSI接続をIPネットワークで実現する技術。
- どんな場面で使う?
-
仮想化基盤やバックアップ、共有ストレージなど。
- メリットは?
-
コストが低く、既存ネットワークを使える点。
- デメリットは?
-
ネットワーク品質に依存し、遅延が発生しやすい。
まとめ:iSCSIは身近で便利なストレージ技術
iSCSIは専門用語に感じますが、実際にはとても身近な技術です。
ネットワークさえあればストレージを自由に提供でき、
仮想化やバックアップなど多くの場面で役立ちます。
導入のハードルも低く、NASやソフトウェアストレージを使えば
個人でも試すことができます。
「ストレージを柔軟に拡張したい」「仮想化環境を構築したい」
そんな場面では iSCSI の知識が役に立つかもしれません!

