Linuxの世界に足を踏み入れると、よく耳にする言葉のひとつに「プロセス」があります。
「プロセスを確認する」「プロセスを落とす」「デーモンプロセス」など、さまざまな場面で登場するこの言葉ですが、最初のうちは少し曖昧に感じる人も多いでしょう。
この記事では、Linuxにおける「プロセス」とは何か、その仕組みや関連する用語を整理して、わかりやすく解説します。
エンジニアとしてLinuxを扱ううえで欠かせない前提的な知識なので、ぜひ今後のためにも押さえていきましょう。
プロセスとは? まずはイメージから

プロセス(Process)とは、実行中のプログラムのことを指します。
たとえば、あなたがLinuxでテキストエディタを開いたとします。
その瞬間、OSの中では「テキストエディタ」というプログラムが動き始めます。
この“動いている状態”を表すのが「プロセス」です。
つまり、
- プログラム → まだ実行していない「設計図」
- プロセス → 実際に動いている「作業中の実体」
と考えるとイメージしやすいでしょう。
Linuxにおけるプロセスの役割
LinuxはマルチタスクOSです。
つまり、複数のプロセスを同時に実行できるように設計されています。
あなたがWebブラウザでサイトを開きながら、別のターミナルでコマンドを実行し、さらにバックグラウンドでサーバーが動いているとします。
それぞれが独立したプロセスとして動作しています。
Linuxカーネルは、これらのプロセスがCPU時間を公平に使えるようにスケジューリングを行い、まるで同時に動いているように見せています。
実際にはCPUが瞬間的に処理対象を切り替えていますが、人間から見るとすべてが同時進行しているように感じられます。
プロセスとスレッドの違い
「プロセス」と似た言葉に「スレッド(Thread)」があります。
混同しやすいですが、この2つには明確な違いがあります。
| 項目 | プロセス | スレッド |
|---|---|---|
| 概念 | 実行中のプログラム全体 | プロセス内で動く小さな実行単位 |
| メモリ空間 | 独立している | 同じプロセス内で共有 |
| 影響範囲 | 一つが落ちても他には影響しない | 一つが落ちるとプロセス全体に影響 |
| 作成コスト | 高い | 低い(軽量) |
たとえば、Webブラウザはプロセス単位で動作し、その中でタブごとにスレッドを作って処理を並行化しています。
このように、プロセス=入れ物、スレッド=その中で動く作業単位という関係です。
Linuxでのプロセス管理の仕組み
Linuxでは、すべてのプロセスが「プロセスID(PID)」という一意の番号を持ちます。
このPIDによって、カーネルやユーザーが特定のプロセスを識別・制御できます。
プロセス階層(親と子)
Linuxのプロセスは、親子関係を持っています。
最初に起動する「init(または systemd)」がすべての親(ルートプロセス)であり、そこから次々に子プロセスが生まれます。
たとえば:
- systemd → sshd → sshセッション
- systemd → nginx → 各ワーカープロセス
このように、ツリー構造で管理されています。
もし親プロセスが終了すると、子プロセスは「孤児プロセス」となり、initが引き取るというルールもあります。
プロセスの状態とは?
プロセスは、実行中にもさまざまな**状態(State)**を持っています。
ps コマンドで確認すると、「S」「R」「Z」などの文字で表されます。
代表的な状態を整理してみましょう。
| 状態 | 意味 | 補足 |
|---|---|---|
| R | 実行中(Running) | CPUで実行中または実行待ち |
| S | スリープ(Sleeping) | 入出力待ちなど、一時的に停止中 |
| D | アンインタラプタブルスリープ | 割り込み不可な待機状態(I/O中など) |
| T | 停止(Stopped) | ユーザーやデバッガによって一時停止中 |
| Z | ゾンビ(Zombie) | 終了済みだが親プロセスが回収していない状態 |
特にこの中でも聞くのは「ゾンビプロセス」かなと思います。
これは、実行は終わったのに親プロセスが終了報告を受け取らず、メモリ上に情報だけ残っている状態です。
放置するとリソースを圧迫するため、管理者が適切に処理する必要があります。
プロセスの優先度(nice値とrenice)
複数のプロセスが同時に走るとき、CPUの使用優先度を調整したい場合があります。
そこで登場するのが「nice値」です。
nice コマンドを使うと、プロセスの“お行儀の良さ”を設定できます。
値が低いほど優先度が高く、値が高いほど控えめに動きます。
- nice値の範囲: –20 ~ +19
- デフォルトは 0
- 一般ユーザーは +値(低優先度)のみ設定可能
- rootユーザーなら -値も指定可能(高優先度)
また、実行中のプロセスに対して優先度を変更する場合は renice コマンドを使用します。
これにより、重たいバッチ処理を控えめにしたり、リアルタイム処理を優先させたりと、柔軟な運用が可能です。
フォアグラウンドとバックグラウンド
ターミナル上でプログラムを実行するとき、そのプロセスがフォアグラウンドなのかバックグラウンドなのかによって挙動が変わります。
- フォアグラウンド(Foreground) → 実行中はターミナルを占有し、処理が終わるまで他の操作ができない。
- バックグラウンド(Background) →
&をつけて実行することで、ターミナルを開放したまま処理が継続。
たとえば、
python3 script.py &とすれば、スクリプトがバックグラウンドで動き続けます。
また、jobs, fg, bg, kill などのコマンドで状態を切り替えたり停止したりできます。
デーモンプロセスとは?
Linuxには、常にバックグラウンドで動いているプロセスがたくさんあります。
これらを「デーモン(Daemon)」と呼びます。
「デーモン(Daemon)」についての記事はこちら!⬇️

たとえば:
- sshd(リモート接続を待機)
- httpd / nginx(Webサーバー)
- cron(定期実行スケジューラ)
これらのデーモンは、システム起動時に自動的に立ち上がり、
特定のイベント(リクエストや時間)を待ち続けています。
最近のLinuxでは、systemdがデーモンの起動や監視を一元管理しており、
systemctl start や systemctl status で簡単に制御できます。
プロセスを確認・管理するコマンドまとめ
Linuxでプロセスを扱ううえで欠かせない基本コマンドを整理しておきましょう。
| コマンド | 用途 | 補足 |
|---|---|---|
ps aux | 現在のプロセス一覧を表示 | 状態・CPU使用率などを確認 |
top / htop | 動的にプロセス監視 | リアルタイム表示で便利 |
kill PID | 特定プロセスを終了 | kill -9 は強制終了 |
jobs | バックグラウンドジョブを確認 | ターミナル限定 |
fg / bg | ジョブを前面/背面に切り替え | 開発時に便利 |
nice, renice | 優先度を設定・変更 | 負荷制御に使用 |
これらを組み合わせて使うことで、サーバーやアプリの安定稼働を維持しやすくなります。
一問一答(ポイント整理)

- プロセスとスレッドの違いは?
-
プロセスは独立した実行単位、スレッドはその中で動く軽量な作業単位。
- ゾンビプロセスって危険?
-
放置するとリソースを圧迫する可能性があるので、定期的に確認・対処が必要です。
- デーモンは何をしているの?
-
常駐して特定のサービス(Web、SSHなど)を提供します。
- 優先度(nice値)を下げるとどうなる?
-
他のプロセスより多くCPU時間を使えるようになります(ただし慎重に)。
まとめ:プロセスを理解するとLinuxが見えてくる
プロセスは、Linuxにおける「生命活動」ともいえる存在です。
一つひとつのプログラムが独立したプロセスとして動き、
カーネルがそれらを巧みに制御することで、私たちは快適にシステムを利用できます。
プロセスの概念を理解すれば、サーバーのトラブルシューティングや負荷対策、
さらには開発環境の最適化にも役立ちます。
まずは ps や top コマンドで、今どんなプロセスが動いているのかを観察してみましょう。
「Linuxの中で、どんな作業が進んでいるのか」を知ることが、セキュリティ面においても大切です。

